« 第157号 2005年7月23日ロンドンで再び同時爆発事件が発生 | Main | 第159号 2005年8月2日 変化の理 »

07/31/2005

第158号 2005年8月1日6ヶ国協議と日本

  >>日々通信 いまを生きる 第158号 2005年8月1日<<

6ヶ国協議と日本

6ヶ国協議はいま合意文書の作成に向けて努力中だという。前回に比して大きな前進だ。朝鮮(共和国)もアメリカも協議の成功に大きな期待を寄せ、そのために真剣な取り組みをしているように見える。

日本の報道は難行とか、米朝間の対立は埋まらないとかいう記事が多い。この会議の直前に朝鮮の元秘密工作員の国会証言をおこなったり、横田めぐみさんの母親の悲痛な絶叫を放映したりして、もしかしたらこの協議の成功を望んでいないのではないかとさえ疑われる。

日本の政府筋は、アジアの未来に決定的な意味をもつこの会議の最中に、この会議に対してきわめて消極的な態度を取っているように思われる。この会議についての積極的なコメントは何一つ聞かれず、国会では与党内でも、国民の間でも意見が二つに割れて決着をつけがたい郵政の問題に血道をあげている始末だ。

いま、この会議の成功に日本政府が冷淡なのは残念なことだ。おそらく、アメリカの意向を汲みかねてどうしたらいいのかわからないのだろう。

平和で順調にことが運んでいるときは無能な政府でもすむのだが、歴史の転回点ともいうべき重大なときには、二世、三世の無能な政治家には、情勢の変化がわからず、沈黙するか、硬直した強硬路線のご託をならべるしか能がないのだ。

いま、この協議を成功させなければならない。それは米朝がともにいだく強い決意だ。アメリカは時間が経てば朝鮮の核兵器開発が大きく前進することをおそれている。朝鮮はなんとしてもアメリカと国交回復して、平和を確実にし、一刻も早く経済を建て直さなければならない。

朝鮮が核兵器の開発を急ぐのは、これで日本やアメリカを攻撃するためではない。そんなことことをしても、たちまち強力なアメリカの軍事力に国土を破壊され、政権が覆滅するのは明らかだ。

朝鮮の核兵器開発はアメリカと国交回復を実現するためのカードなのだ。いまは、軍事力で国の安全を維持することはできない。軍事優先主義をとなえる朝鮮もそれは知っているはずだ。

アメリカもイラク戦争によってそれを切実に思い知ったにちがいない。朝鮮を攻撃して何が得られるか。そもそも、その戦争に韓国の協力を得られるか。たとえ、金正日の政府を崩壊させ、金正日を殺害したところで、混乱が拡大し、民族的抵抗を招くだけで何一つ問題を解決することはできない。

イラク軍を壊滅させ、フセインを捕えてもイラク問題は解決しなかった。ますます混乱が拡大し、泥沼の戦争にひきこまれていくばかりだ。もしアメリカが朝鮮に攻め込んでも、必ずしも、朝鮮が韓国の米軍基地を攻撃し、韓国軍が朝鮮軍と殺し合いをするという展開にはならないかもしれない。米軍はゲリラと化した朝鮮軍に長期にわたる出血を強いられることになるかも知れない。韓国はその戦場になり、たいへんな迷惑を蒙ることになる。韓国人民はアメリカの戦争に反対し、アメリカとの対立を深めることになるだろう。

アメリカは朝鮮を攻撃して何を得るのか。イラク戦争で身動きできないアメリカはこれ以上無意味な戦争をして、若者を殺し、国力を消耗する余裕はないのだ。

そうだとすれば、平和によっていまの問題を解決しなければならない。朝鮮は南北間の融和と協力を軸に、中ロの支援もえて、あたらしい東北アジアの一員となり、東北アジア共同体の成立に向けて進んでいくだろう。アメリカはそこにどうしても一枚かむ必要がある。米朝国交回復はアメリカにとっても利益になるのだ。

もちろん、朝鮮は米日の援助がほしい。米日との国交回復を強く望んでいる。しかし、米日がアジアを敵とするならば、米日抜きで東北アジア共同体の発展の方向に進むことになるだろう。しかし、それはアメリカも日本も望むところではない。アメリカはアジアとの協力なしには経済が成り立たない。日本ももちろんそうだ。世界経済はひとつに結ばれ、平和を必要とするのだ。

戦争という手段の無意味さがあきらかになったいま、平和的協力の道を探らなくてはならない。それがいま、アメリカから見ても、なんとしても6ヶ国協議を成功させなければならない理由である。

あれほど敵対的だった米中が、いまは切っても切れない深い経済のきずなでつながれている。これからはアメリカにとっても、かつてあれほどの戦争をしたヴェトナムとの友好と経済協力が大事になるだろう。

東北アジア共同体が成立し、さらに東南アジア諸国連合との結びつきがつよまり、東アジア共同体の方向に進むとすれば、アメリカはそれをこころよう思わないにしても、そのなかに重要な位置を占める必要があるのだ。それが、これからのアジアの動向であり、アメリカの位置である。日本はこのような世界史の動向に対してどのように進むつもりなのか。過去の戦争を肯定し、アジアを敵視する態度をとりつづけ、アジアの不安定要因となる道を選ぶのか。

米朝の亀裂、相互不信は深い。なにしろ朝鮮戦争以来、半世紀にわたって国交断絶し、敵対してきたのだ。米朝合意が困難で、6ヶ国協議が難行するのは当然だ。しかし、どのような紆余曲折を経ても、合意が成り立ち、米朝国交正常化が実現するのであろう。日本はぐずぐずしながら、そのあとで国交回復をするつもりなのかもしれない。しかし、これではアジアにおいて「名誉ある地位」を占めることはできない。

日本はなぜ、東アジア共同体の成立に尽力し、そこで「名誉ある地位」を得ようとしないのだろう。アメリカのひたすら軍事力にたよる一国覇権主義が敗北し、大きな後退を余儀なくされているいまは、日本国憲法が光り輝くときだと思われる。

いま、堀田善衛について書いていて、武田泰淳の『蝮のすえ』の辛島の言葉を思い出した。

辛島は上海で特務機関の仕事をしていて、日本人を戦争に動員する仕事をし、戦後のいまは戦犯として中国政府に追及されている。辛島は言う。

「俺は日本精神の演説をした。君が言うとおり、聴き飽きるほどした。人々はそれを信じて死んだ。俺の若い兄弟も死んだ。奴らは二度と生き返らん。都都的(トントンデ)生き返らん のだ……」                       
            
「呼べど答えず……生き返りはせんさ。夢枕にもたたん。忘れられる。はじめは段々と、しまいにはキレイサッパリ、忘れられるんだ。そういう世の中を、君はどう思う。俺は日本精神なんかなくても生きていられる。今日も生きてる。なくても生きられるくせに、日本精神なき者は売国奴だと演説した俺と、そんな俺の演説をまに受けて喜んで信じてさ、死んでしまった奴らとそれから又、Aのような奴、君のような奴、あの女のような奴、そんな奴等でできあがっているこの日本という奴はこれは一体何なのだ。え、何だ、これは。俺は死刑になる。それは天罰だ。天罰でなくてもいい、しかし罰だ。」

「だが俺を罰したところで、すまんよ、すみはせんよ。俺は又生まれかわってくる。多分は同じ日本人として生まれかわってくるんだからな。…………もしかしたら、この人種は、つまり俺たちは、絶滅された方がいいかも知れんよ。どっちにしろ、このまま只ですまんよ。すむはずがない、これは苦笑で終わる問題じゃない。皮肉で終わる問題じゃないんだ。な、君もふくまれているんだ。インテリーもふくまれているんだからな」

「インテリーは社会の良心だ。そうだな、杉君。イヤがってもそれは責任だ。だが、君らは社 会の腕にも脚にも、胃にも腸にもなれやせん。せいぜいのところ神経だ。小うるさい、役にも立たぬ神経だ。しかも妙てけれんな一人種の末梢神経だ。騒いでもだめさ。世界も俺たちも痛痒を感じんよ。俺たちは、まあ心臓さ。とまりたい時はとまる。」

「蝮のすえ」は戦後間もなく1947年の作品だが、この辛島の言葉を、戦後10年たって、「記念碑」を書く堀田は切実に思い出していたのではないか。朝鮮戦争で経済復興が急速に進み、日本の再軍備が押し進められていた時代であった。

そして、A級戦犯が合祀された靖国神社に内閣総理大臣が参拝し、憲法改訂が急がれるいま、辛島の言葉はますます強い重みで私たちに迫ってくる。

歴史がこれらの作品をよみがえらせる。そして、これらの過去の作品は現代をはっきりと照らし出しているのだ。

暑さの中に8月が来る。戦後60年ということで、テレビで例年にましてあの戦争を回顧する番組が放映されている。

戦争とは何か。いま、日本はどこへ行こうとしているのか。暑さのなかで思いを深める時だと思う。

パソコンが壊れ、落ち着かぬ気分で日を過ごしている。
皆さんはいかがお過ごしですか。
暑さに喘ぎながらも、歴史の転換点にあるいまを、元気に生きたいとおもいます。
体に気をつけてお過ごしください。

    伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu/

|

« 第157号 2005年7月23日ロンドンで再び同時爆発事件が発生 | Main | 第159号 2005年8月2日 変化の理 »

Comments

Hello !! The name is CARMELIA KEITH. I have a house in Merced. This feb i will be 48. I go to niight school at The Attractive Prep School situated in Mesquite. I am planning to become a General. I like to do Fencing. My dad name is Bruce and he is a Physician. My mom is a Corrector.

Posted by: Call of Duty Ghosts Hack | 08/29/2014 at 12:04 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92803/5240122

Listed below are links to weblogs that reference 第158号 2005年8月1日6ヶ国協議と日本:

« 第157号 2005年7月23日ロンドンで再び同時爆発事件が発生 | Main | 第159号 2005年8月2日 変化の理 »