第217号 2006年7月21日 アジアの平和
伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu
アジアの平和
田中宇氏の<田中宇の国際ニュース解説 2006年7月19日>は「イスラエルの逆上」という見出しで次のように伝えている。
http://tanakanews.com/g0719israel.htm
>7月12日、イスラエルとレバノンの戦争が始まった。戦争開始のきっかけは、レバノン南部に陣取るシーア派の武装組織ヒズボラが、レバノン・イスラエル国境からイスラエル側に攻撃を仕掛け、戦闘の中でイスラエル軍の兵士2人がヒズボラに捕まって捕虜になったことである。イスラエルは、捕虜奪還の作戦の一環として、レバノン国内の空港や発電所、幹線道路などに大規模な空爆を行い、ベイルート港も海上封鎖され、レバノンは国家として機能麻痺に陥った。
>この流れの中で理解に苦しむのは、イスラエルが捕虜奪還のためと称して、空港や発電所を大破壊したことである。イスラエルは、空港や道路を破壊した理由について「ヒズボラが、イランやシリアから支援を受けられないように、交通路を遮断した」と言っているが、ヒズボラへの支援は、シリアとレバノンの長い国境線にある無数の山道を通って行われており、空港や幹線道路は関係ない。イスラエルによる攻撃は、レバノンの無数の一般市民の生活を破壊し、レバノン人が一致団結してイスラエルを敵視し、ヒズボラへの支持を増やす効果を生んでおり、全く逆効果である。
田中氏は、イスラエルの右派はパレスチナ人・アラブ人と徹底的に戦い、占領地からパレスチナ人を追い出し、アメリカの力を借りて周辺のアラブ、イスラム諸国を政権転覆して弱体化し、中東をイスラエルに対して従順な地域にすることを、1990年代から目標にしてきたという。
太田述正氏のコラムは15日付けのワシントンポストの記事を次のように伝えている。
http://ohtan.txt-nifty.com/column/
>米国政府の幹部が、イスラエルのガザでの「反撃」によって、既にハマスの閣僚メンバーの三分の一はイスラエルに捕らえられ、三分の一は隠れており、三分の一は何もできない状態であり、もはやハマス「政府」は壊滅している、と述べていることや、米国政府とイスラエル政府の幹部が一致して、イスラエルのレバノンでの「反撃」によって、ヒズボラがイスラエルにとって安全保障上の脅威であることをなくすこと、つまりは、2004年に採択された国連安保理決議1559号の残された目標であるところの、ヒズボラの解体・武装解除とレバノン政府の(ヒズボラが巣くっている)レバノン南部をコントロール下に置くこと、が目標であると語っている。
田中氏はイラク戦争はブッシュ政権の中枢に入り込んだネオコンがイスラエル右派の思想を実現するために仕組んだ戦争だったという。このイラク戦争がアラブ武装勢力の抵抗にあって泥沼戦争に落ち込み、身動きできなくなった。イスラエルもパレススチナ人民の抵抗に会い、さらにパレススチナ自治政府の選挙でハマスが勝利して、イスラエル右派は行きづまった。その結果、イスラエル軍は圧倒的な軍事力でパレススチナ自治政府を蹂躙し、これに抗議するヒズボラを壊滅させようと、レバノンに対して猛攻を加え、女や子どもを含む多数の人民を殺傷している。
イスラエルに対する国連安保理の非難決議にアメリカ一国だけが反対した。イスラエル右派とアメリカの右派ネオコンは中東支配のたたかいに行き詰まり、戦線を拡大して、事態を打開しようとしているのだろうか。
しかし、彼らもこのような戦争が一時的には戦果をあげても、結局はさらに底知れぬ泥沼におちこんで行くことを知っているはずだ。事態はどう展開するか。アメリカ・イスラエルはアラブ人とイスラム教徒を敵とする破滅的戦争に突入するのか。それとも一転して平和の道を模索するのか。
朝鮮問題も、こうした世界情勢と無関係ではあり得ない。中東で行きづまったアメリカは、アジア問題に手がまわらない。朝鮮(北)がイランとむすびつくのをおそれ、アジアの問題を中東と切り離し、中国を中心とする6カ国協議で解決したいのだろう。そのためには、制裁をつよめるだけでは解決することができない。朝鮮がつよく求めている米朝直接交渉が何らかの形で開かれ、問題解決の道が探られるのではないか。
安保理決議直前の中国の努力は失敗した。韓国・朝鮮間の閣僚会議は中断された。朝鮮を支える中韓の支援をうしなえば朝鮮の危機は一層深刻になる。米朝とともに深刻化する危機に迫られて、新しい打開の道が探られることになるのではないかと思う。
ブッシュ大統領が「悪の枢軸」とよんで、敵対的態度をあらわにしたのがこの危機の始まりだった。イラン・朝鮮間の結びつきをたちきり、朝鮮を6カ国協議に参加させ、平和的解決を実現するのがいまの課題であるとするなら、相互にはげしく敵対し、相互不信にしばられている現状を打開するためには、対話ではない直接交渉が必要だ。
この間の推移を見ていると、日本は軍事制裁を思わせるような閣僚発言がつづくなど、ひたすら緊張を強める役割を果たしている。一方で米国は中国との友好、交流の態度をつよめ、平和的解決の必要を主張しつづけている。これが日本がアメリカから割り振られた役割であろうか。
吉田康彦さんのブログ(掲示板4056参照)によれば、朝鮮はひたすら米国との直接交渉で国交回復を求めており、朝鮮には中国の物資が氾濫しているという。韓国も朝鮮に対する支援と経済交流を盛んにして、影響力を強めている。朝鮮はこの支援と経済交流を支えに改革開放の道を模索している。この平和の流れは一時的な緊張があっても、もはやとどめることはできない。
ベネズエラをはじめ中南米では次々と反米的な左翼政権が生まれている。国内でも、反戦的な勢力が増大している。EUの協力は得難くなり、ロシアは石油を背景に勢力を拡大している。アメリカは次第に孤立を深め、中国との結びつき、中国を軸とするアジアの安定をつよく求めている。米朝間の危機が一転して平和に転ずることは、決してあり得ないことではない。それだけがアメリカの権威をしばらくでも長持ちさせる道だ。
米朝間に国交が回復して、アジアの平和が実現したとき、日本は中国、韓国、朝鮮とどのような関係を結ぶのだろうか。日本がアジアのイスラエルになることは避けなければならない。
小泉首相はひたすら米国に追従して、靖国参拝のほか、アジアに対する自己の見識ははっきりしなかった。小泉首相の後継者をもって任ずる安倍官房長官は、拉致問題を理由に平壌宣言をこわした対中朝強硬論者で、政経分離などとわけのわからぬことを主張している。これは対米追従の強硬派で、アメリカ本体が対中友好路線をあるく一方で、アジアに緊張をもたらす悪役、アメリカのネオコンの代理人を演じさせられるのだ。
アメリカの潮目が変われば安倍の出番はない。堀江事件、村上事件、それにつづいて天皇靖国事件とつづくところを見れば、小泉・安倍の線は終わったのかもしれない。あの富田朝彦氏のメモがいま出るというのも決して偶然のことではないだろう。そもそも、日米軍事体制再編の仕事が終われば、小泉の役割は終わったのだ。自民党政権もブッシュ政権も来年までで、そこに新しい道が開けることになるだろうと思っていたが、意外にはやく自民党右派政権のおわりが来るのかもしれない。
このごろ、鬱陶しい日がつづく。いよいよ、梅雨もおわりなのだろう。二三日、休養のために箱根に行ったが、ずっと雨だった。わずかにピカソの展覧会を見ただけで、ずっと宿に閉じこもっていたが、おかげで、休養にはなった。
皆さんもお体に気をつけてお過ごしください。


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