第227号 禍を転じて福となす
>>日々通信 いまを生きる 第227号 2006年10月21日<<
発行者 伊豆利彦
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禍を転じて福となす
中国の胡錦涛国家主席の特使として訪朝した唐家セン国務委員(副首相級)は北朝鮮の最高指導者、金正日総書記と会談した。
金総書記がこの問題で外国の代表と会うのは初めてであり、両国の外交トップが顔をそろえる会談で、この会談について中国外務省の劉建超報道局長は「非常に重要な訪問」と位置づけ、金総書記と「現在の朝鮮半島情勢をめぐる問題について突っ込んだ意見交換をした」と述べた。
(朝日コム 2006年10月20日00時11分)
http://www.asahi.com/international/update/1020/001.html
北朝鮮の朝鮮中央通信は「両国間の友好関係を発展させ、朝鮮半島の平和と安全を保障する問題と相互の関心事となる一連の国際問題について討議した」と報じ、金総書記がメッセージに「謝意」を表明したと伝えた。 【北京19日共同】
http://www2.kanaloco.jp/kyodo/news/20061019010007631.html
胡錦涛国家主席は17日、訪中した扇千景参院議長に、「北朝鮮には国際社会の強烈な反応を知らしめる必要がある」「遺憾なことに北朝鮮は我々の勧告を聞かなかった」と発言した。胡錦涛主席が北朝鮮にこれだけ強い不快感を示すのは異例のことだという。
経済制裁強化の圧力を背景に、中国は朝鮮に対して強い決意をもってこの訪問をおこなった。核実験に反対する立場を明確に伝えるとともに、6者協議への早期復帰を呼びかけたとみられる。関連報道には「突っ込んだ意見交換をした」と繰り返されている。これまでになく深刻な討議がおこなわれたものと思われる。
朝鮮は食糧と燃料を中国に依存している。中国が強い決意で制裁を強めれば、金正日政は存続が困難になる。いまでも、食糧不足のため兵士でさえ飢餓に苦しむ状態で、極端な士気の低下が見られるという。表面的には偉大なる指導者に対する讃美と愛国的言辞が氾濫しているが、反政権気分はさまざまな形で噴出しているという。中国に見捨てられては金正日政権は崩壊するしかない。
金政権は国家的権威を維持するためにますます核実験の成功を強調するが、その実態は崩壊寸前であるらしい。ここまで追いつめられて、朝鮮は窮鼠かえって猫をかむの自殺的暴発にはしる可能性もあるが、大転換をとげ、なんとか体面をととのえて6カ国協議に復帰する可能性も大きくなったのではないかと思う。
朝鮮日報はある消息筋の言葉として<「米国がある程度譲歩すれば、われわれも両者会談であれ、6カ国協議であれ、ある程度の譲歩はするつもり」と明らかにした>と伝え、また、「金総書記が核実験について中国側に申し訳ないという意を伝えた」と報じている。
2006年10月20日09時30分 朝鮮日報
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2601745/detail
[北京 20日 ロイター]はつぎのように伝えている。
> 中国の李肇星・外相は20日、中国の胡錦濤国家主席の特使として唐家セン国務委員(外交担当、前外相)が北朝鮮を訪問したことについて、相互理解を深めた、との認識を明らかにした。また、6カ国協議の再開方法について協議した、と述べた。
>同相は、記者団に対し「少なくとも相互理解が深まった。参加者全員が、できる限り早期に6カ国協議を再開させる方法を話し合った」と述べた。
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=topNews&storyID=2006-10-20T174721Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-233019-1.xml&WTmodLoc=NewsArt-C1-ArticlePage1-3
金正日総書記は2回目の核実験はおこなわない、米国の金融制裁が解除されれば6カ国協議に復帰するとると述べたというが、アメリカのライス国務長官は朝鮮の態度に変化がないとして問題にしなかった。
アメリカはアジアから遠く離れた国だ。それに、イラク戦争、イラン問題に手一杯で、朝鮮問題にはそれほど力を入れる余裕がないということだろうか。このまま制裁を強化すれば金正日政権は崩壊すると見ていて、問題解決のために特別な努力をするよりは、各国がアメリカの指示にしたがって制裁強化に足並みそろえることばかりを求めているのであろうか。結局、朝鮮問題は中国にまかせるということであるらしい。
核兵器を放棄して6カ国協議に復帰するにせよ、それに固執して破滅の道を歩くにせよ、北朝鮮の生きる道は改革開放路線を歩み、国民生活を安定させることであるにちがいない。そこに東アジアの新しい共同と発展の道が開けるのだろう。
日本はアメリカ以上に制裁の強化を強調し、金正日政権を崩壊させることに熱心なようだ。それでいて金政権崩壊後の展望を欠いている。朝鮮の核保有をはげしく攻撃する一方で、日本もまた核武装すべきだということが主張されたりしている。朝鮮問題は日本の軍事力強化の右翼的主張の昂揚に利用されるばかりで、国としての取組みは上滑りしているように感じられる。これもアメリカまかせの気楽さなのだろうか。
中国と韓国が直接金正日政権と交渉し、平和的解決のために尽力しているのに、アメリカと日本は直接交渉の道が断たれていて、制裁を強化するばかりなのは、これからのアジアにおけるアメリカと日本の位置を示している。
強大な核戦力をを背景に、イラク、イラン、朝鮮を「悪の枢軸」とよんでその壊滅をはかり、世界を意のままに支配しようとしたアメリカは、中東で失敗し、アジアからの後退を余儀なくさせられている。お膝元の中南米でも反米政権が続出して、その支配がゆらいでいる。
しかし、アメリカは国土は広大で、経済力も大きい。遠い世界の果てまで軍隊を出して兵士たちを死なせる必要はない。いまはアメリカの一極支配から、多極世界へと移行するときなのであろう。そして、あらためて諸民族の平和共存を実現する時代へと進むのであろう。その道は険しいが、21世紀はそのような世界へ向っていくことになると思う。
日本は憲法改定だの、軍事力強化だのにうろちょろせず、唯一の被爆国として、核廃絶と平和な世界の実現のために先頭に立って奮闘すべきなのだと思う。
核を開発してしまった人類は思いくびきを背負ったのだ。核を開発し、最大の核保有国のアメリカが何よりも今日の核兵器開発競争に責任がある。このアメリカが核兵器廃絶の運動の先頭にたつときは来ないだろうか。そのためには、もっともっと多くの血が流れ、人類絶滅の経験をしなければならないのだろうか。
「悲劇はついに来た」という「虞美人草」の漱石の言葉があらためて思われる。「虞美人草」には甲野さんと宗近君の次の会話がある。
>「死に突き当らなくっちゃ、人間の浮気は中々已まないものだ」
>「已まなくって好いから、突き当るのは真っ平御免だ」
>「御免だって今に来る。来た時にああそうかと思い当るんだね」
>「誰が」
>「小刀細工の好な人間がさ」
そして、この作品の末尾に、甲野さんは次のような言葉をノートに記した。
>死を忘るるものは贅沢になる。一浮も生中である。一沈も生中である。一挙手も一投足も悉く生中にあるが故に、如何に踴るも、如何に狂うも、如何に巫山戯るも、大丈夫生中を出ずる気遣なしと思う。贅沢は高じて大胆となる。大胆は道義を蹂躙して大自在に跳梁する。
>道義の観念が極度に衰えて、生を欲する万人の社会を満足に維持しがたき時、悲劇は突然として起る。ここに於て万人の眼は悉く自己の出立点に向う。始めて生の隣に死が住む事を知る。妄りに踴り狂うとき、人をして生の境を踏み外して、死の圜内に入らしむる事を知る。人もわれも尤も忌み嫌える死は、遂に忘る可からざる永劫の陥穽なる事を知る。陥穽の周囲に朽ちかかる道義の縄は妄りに飛び超ゆべからざるを知る。縄は新たに張らねばならぬを知る。第二義以下の活動の無意味なる事を知る。而して始めて悲劇の偉大なるを悟る。……」
晴れた日がつづく。自然は確実に季節の循環を繰り返す。
いまは、本格的な秋の青空を見ることができなくなった。
人類は自らの住む大地を破壊し、うつくしい青空を自ら奪った。
そして何を得たか。
人類は自らの生存の条件を自ら破壊しつつ、新しい生の可能性を探るのであろうか。
安倍首相がつくるという「美しい国」というのはどんな国なのか。
いまほど生の快楽が宣伝されるときはないが、いまほど<生の苦痛>が身に迫るときもない。
中学生が、小学生までもが<いじめ>を訴えて自殺する時代だ。
<生の苦痛>の時代に生きる私は、しかし<生のよろこび>を感じてもいるのだ。
皆さんにはどんな<生のよろこび>があるのだろう。
どうぞ、元気でお過ごしください。


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