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11/01/2012

第313号  日本の未来

日々通信  20012年11月1日

 発行者 伊豆利彦
 ホームページ http://homepage2.nifty.com/tizkotosimo

日本の未来

 レコードチャイナ(10月1日配信)は、中国の『環級時報』(電子版)が日中国交正常化40周年を記念しておこなった大規模なインターネット調査の結果を次のように伝えている。

◇「今後日本と戦争になる可能性は大きいか?」との問いに、79.9%のユーザーが「非常に大きい」「やや大きい」と答えたのに対し、「大きくない」がわずか6%。「絶対にない」と断言しているユーザーは0.9%しかいなかった。日中関係をたびたび悪化させる3大要因については「歴史的恨み」「領土紛争」「日本の右翼」が挙げられ、反対に「緊密な経済貿易交流」「補完的な経済構造」「文化的類似」の三つが日中関係を徹底的に破壊させない接着剤的役割を果たしていることが分かった。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=65097&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

 ネットユーザーを回答者とするアンケートだから、一般国民の世論とは区別して考える必要があるが、中国のネットユーザーは5.38億人に達し、国民を動かし、政府を動かす力をもっていると思う。

 しかし、9・18を頂点として、公安当局の規制によって鎮静化に向かい、日本企業は操業や営業を再開した。中国国内からも、日中貿易への影響や日中関係のさらなる悪化を懸念する声が上がり始めているという。

 日本と中国の関係が悪化し、経済関係が断絶すれば、両国が蒙る被害は量り知れない。両国の政府や経済界の責任ある人々は十分それを理解していて、事態の鎮静化につとめていると思うが、民衆の蜂起が歴史を動かしてきた中国の歴史を思うと、決して楽観できない。

 今度の事件でいろいろ新聞やテレビを見たが、もっとも心に残ったのは、NHK9月18日の「クローズアップ現代」が報じた一大学生のことである。この大学生は日本製品を愛し、日本に親近感を抱いてきた。これまで「反日デモ」に参加したことはなかったが、今度は参加した。「他の国にばかにされることは、我慢ならな」かったと言う。この大学生は「デモに参加するのは中国人としての使命だ」と言っている。

 今度のデモがこれまでにない激しさだったのは、9月9日、APECで胡錦濤主席が野田首相と立ち話をして、尖閣国有化に反対したのに、この2日後に強行されたという事件がある。この立ち話は日本側が執拗に申し入れて実現したもので、中国側は日本側から事態を打開する提案があると期待していたという。しかし、この2日後に「国有化」が決定され、中国側は中国の体面が踏みつぶされたと激昂し、これまでにない「反日デモ」の盛り上がりを招いた。

 9.18の柳条湖事件記念日を、中国では国辱(国恥)記念日と呼び、中国が戦うこともなしに日本の侵略を受け入れた日として、例年、国を挙げて憤りを示す日としている。この国辱記念日に向けて尖閣問題に抗議する中国側の運動は盛り上げられてきたのだった。

日本が尖閣を日本の固有の領土と信じていると同様に、中国もまたこれを中国固有の領土と信じているのだ。両者がともに自国の領土と主張しているのだから、明らかに「領土問題」が存在するといわなければならない。日本は、中国の強い抗議にも関わらず、尖閣は日本固有の領土であって、領土問題は存在しないと主張し、発生するトラブルは国内法によって処理する方針を誇示して、中国側の申し出を「毅然として」一切拒否する日本の態度は、中国から見れば、中国を蔑視するものとして強い屈辱感を呼び起こすものであった。

 まして、国家主席の強い要望が何ら顧慮されることなく蹂躙されたことは、中国人の面子をふみつぶす屈辱的な事件だった。クローズアップ現代の大学生がが「デモに参加するのは中国人としての使命だ」と思うのは、この事件が国辱事件と受け取られているからだと思う。

 そもそも、この事件の直接の発端は、石原都知事が尖閣諸島を都で購入すると言い出したことだ。石原は都民の利益とは無関係な尖閣を都のものにして何をするつもりだったのか。こんなことに都民の税金を使うことが許されるものか。結局、尖閣問題での国の姿勢が弱腰だとして、中国を挑発し、日中関係を緊張させ、日本の右傾化を推進しようとしたのだろう。

 石原は「シナ人は追い払え」などと、中国人が嫌がるシナという語を意識的に乱発し、侮蔑的な罵言を吐き散らす。まるで右翼のゴロツキだ。石原には中国に対する強いコムプレックスがあると思われる。戦時中は中国人をチャンコロと呼んで侮蔑した。石原には子どもだったその頃の侮蔑意識が残っているのだろう。その中国が戦勝国になり、日本は敗戦国になった。日本はアメリカに敗けたので、中国に敗けたのではないという思いが石原には強いのではないか。経済的に日本が世界の一位、二位を占める大国になって、石原の劣等感は、優越感に変わり、中国を侮蔑する悪罵を乱発させた。石原には中国が経済的にも急成長して、日本を追い越し、世界第二の経済大国になったのが我慢できないのだろう。このコムプレックスが石原に中国に対する侮蔑的な罵詈雑言を乱発させるのだとと思われる。

 しかし、石原は日本社会から落伍して対中悪罵に快をむさぼる右翼のゴロツキではない。前国会議員で一派の旗頭であり、2,615,120票の支持を得て東京都知事に選任された重要人物だ。石原の発言は中国人から日本を代表する発言と受け取られてもおかしくない。石原発言はマスメディアから批判されることなく、野田首相はこれを受けて尖閣国有化に生みきった。さらに自民党総裁選挙では最右翼の安倍元首相が新総裁に選ばれた。橋下大阪市長は、日本の軍国主義化の合い言葉となった昭和維新を連想させる日本維新党を発足させ、石原新党との連携が問題になっている。日本は急速に右傾化し、中国との緊張を強めている。

 いま、戦争になればどちらが勝つかというようなことさえ話題になっていて、尖閣問題を契機に離島防衛のための日米共同演習が展開され、憲法改正と日米共同防衛を求める動きが強まった。日本は戦争に向かって着々と準備を進めているというべきだろう。これは一般国民の生活感情とかけ離れた動きだと思うが、このような国民感情とかけ離れた戦争への動きが、国民を引きずって戦争へ突入した過去の記憶がよみがえって来て不安である。中国人からすれば、日本に侵略された過去の記憶が日本人以上に強烈に国民感情をゆさぶっていると思う。

 中国の歴史は侵略に苦しんだ貧困と悲惨の歴史だった。特に日本の侵略は過酷で、これに対する抗日運動の発展が中国人民を団結させ、革命を成就させた。中国人はこれを忘れない。中国の教育はこの事実を国民に刻み込ませることを土台とする。9・18の「国恥記念日」は、かつて中国は何ら戦うことなく東三省を奪われたことを「国恥」とし記念するてのだという。

 「9・18を忘れるな」という叫びは中国人の心の声として中国人の間にいまも生きている。この声は尖閣問題を契機にいっそう強くなり、激しいデモを呼び起こした。日本ではこれを「反日教育」の結果として、非難している。日本人は日本の侵略に苦しんだ中国人の心を理解しようとしない。この戦争での中国人の犠牲者は3000万人といわれている。「白髪三千丈」の国だから、この数字に誇張があるかもしれない。日本の歴史家はその数字の正確さをめぐって論争する。しかし、問題は数字の正確さではなくて、途方もない莫大な人々が殺戮されたということである。日本では都市空襲の犠牲者、原爆の犠牲者を宇案であるして忘れることはない。中国人は戦争の犠牲になった一般中国人のことを決して忘れないだろう。

 日本人は日本の侵略の歴史をわすれたがっている。「新しい歴史の教科書をつくる会」の教科書が石原都知事の東京、橋下市長の大阪、橋下と結びつく中田元市長の横浜で採用されている。これまでの歴史教科書が日本の戦争に批判的なのを批判して、日本の戦争を美化・肯定する傾向がある。このう教科書はまだ十分広がっているとはいえないが、石原・橋下などが進出し、安倍自民党総裁がうまれるなど、右傾化が進む日本では、ますます拡大していく危険がある。従来の歴史を使用していても、現代史はほとんど教えられないのが普通で、日本人、特に若い世代は日本の戦争の歴史をほとんど知らないというのが実情だ。日本の侵略の歴史を知らない日本人は、侵略された中国人の心を知るよしもない。そこに右翼的な言辞が飛び込んで来て、容易に国民的な右傾化が進行するおそれがある。

 はやくも「非国民」とか「国賊」というような言葉が飛び交いはじめている。これがネトウヨとよばれるような一部の声にとどまるなら大した問題ではないが、やがて政権が右傾化し、雪崩のように国民が動くときがくるのではないかと不安である。現代の日本人は自己を支える宗教を持たない。仏教はいまでは、多くの日本人にとって死者を葬るための機関と化した観がある。自己を支える思想=信仰を持たぬ日本人は時代の流れに押し流されて右往左往する。
                      
 昭和の初年はマルクス主義が流行して、銀座を歩くモボやモガがマルクスを片手に抱えていたという。この時代にはプロレタリア文学の全盛期で、小林多喜二の『蟹工船』、徳永直の『太陽のない町』などがベストセラーになり、プロレタリア文学に転向する作家が続出した。これが9・18の柳条湖事件を契機に「満州事変」が始まると世の中は一変した。「非常時」が強調されて、言論・思想の弾圧が強化された。左翼の思想家や文学者が一斉に検挙され、過酷な拷問が加えられ、小林多喜二や野呂栄太郎らが殺された。佐野・鍋山らの転向声明があり、獄中の左翼作家の間にも転向があいついだ。

 当時を彷彿させる動きが始まっていて、不安をおさえることができないが、今度は当時の悲惨な歴史を繰り返してはならないと思う。当時と今は共通することも多いが差異もまた大きい。いまは中国についても、日本についても、その過去と現在を一面化することなく、広い視野に立って把握することが必要だ。日本は同盟国のアメリカが日本を守ってくれると信じているが、いまの中米は相互の依存度がきわめて高く、分離することは不可能な融合状態だという。アメリカは領土問題は当事国間で平和的に解決せよと主張し続けている。この問題で中国との関係を悪化させたくないのだ。

 両国が固有の領土であると主張し、主権の尊厳をかけて一歩もしりぞかなければ、結局は武力によって解決するしかない。戦争による解決の道は、経済的な相互依存の関係の深さを思えばほとんど不可能だ。話し合いによる解決といえば、結局双方がともに一定の譲歩をして妥協の道を探るしかない。
       
 中国では党大会で新指導部が成立すれば、新しい方針が出て平和解決の道が探られることになるだろう。日本は右傾化が甚だしいが、それでも解散総選挙となれば、新政権がなんとか打開の道を示すことになるだろう。泰山鳴動して鼠一匹というわけだが、両国間の緊張はますます強まりながらも、なんとか平和が維持されることになれば、やはりほっと一安心ということになろう。

 しかし、中国は民衆の蜂起によって歴史を動かして来た国だ。なによりも今の中国が抗日戦争を土台に中国共産党の指導によって実現されたのであり、革命後も文化大革命の大波が国政をゆるがした。今度のデモで、毛沢東の肖像とともに日本帝国主義打倒のスローガンが掲げられていたのは、いまの問題を考えるためには日本と中国の歴史の根元に立ち返り、そこから未来の可能性を探ることの必要を教えられる。
      
 米中間の貿易額は日中間の貿易額の2.5倍に達するという。EUとの貿易も急速に拡大しているといいう。日本の未来は日中関係の未来と切り離しては考えられないが、それは日米関係、米中関係、さらにはヨーロッパとの関係と切り離して考えることはできない。いま、日中関係の危機に直面して、私たちは歴史の根元に立ち返り、世界史の渦を見渡して、日本の未来を考える必要に迫られている。とりわけ、日米関係は転換期に来ており、原発問題は自然と人間の関係の根源に迫り、その転換を求めている。思えば大変な時代に巡り合わせたものだと思う。しかし、日本の政治家はこれらの根本的な問題には見向きもせずに、選挙で勝つことばかり考えている。途方もない政治の堕落だ。こうして日本は時代の波に押し流され、その場しのぎに終始して、ひたすら没落の一途をたどるのだろうか。

考えることは次々に出てきて、書くべきこともつきない。まさに牛の涎、老いの繰り言だ。事態が急速に発展して、思考も記述も追いつかない。しどろもどろに断片的なことを書き綴るばかりだ。こんな時こそtwitterが有効なのだろう。前号に紹介して以来、書きためたものも多いが、今回は本文があまり長くなったので、このへんで失礼して、近く、改めて紹介の機会をもちたい。

急に冷気が来ました。やがて晴れの続く好天気の秋がくるのでしょう。みなさん、お元気でお仕事にお励み下さい。

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Comments

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Posted by: hay day hack ios | 05/20/2014 at 02:33 PM

MLとかどうかではなく純粋にコメントしますね。
MLの引用も含させていただきます。
>日本人特に若い世代が日本の現代史を知らず、いたずらに反中意識を煽られているのが心配・・・。

なぜしらないのか?
考古学をおしえて国史を
おしえないじゃないですか。
神話が云々、皇室云々という理由で。
他の国とちがい、
世界最古の王朝が現在も存続しているからです。
それは革新系の人には非常にまずい意味を持つ。
自分たちの主張が根本から覆るから。
伊豆様は
軸足がシナ(別に蔑称ではないですよ)に
あるようだ。

>今度の「反日デモ」では、毛沢東の肖像が目立ち、「日本帝国主義打倒」のスローガ
ンが掲げられていました。日本側では「反日教育」の結果だとして、
自国の侵略の歴史を振り返ろうともしません

侵略ですかねえ。
そりゃ植民地であった
東南アジアの宗主国にとっては
侵略ですけれども。
国としてのかたちがあってこそ侵略という定義が
成り立つのです。
内乱ばかりで、中国は国でさえなかった。
中国という国家でさえなかった。
一つの国土に二つの国があったんですから。
歴史を評価してませんか?
良いとか悪いとか
侵略か侵略でないかじゃない。
命より大事なものがある。

毛沢東の肖像を掲げているのは
共産党政府に対する批判だし
今の中国がどう言う状態かは貴方がいう
戦前の日本なんだし共産主義というのは軍国で
全体主義ではないですか?
資本主義、共産主義は全体主義になる。
そうおもっています。

Posted by: 河童工房(◇) の憤懣本舗ブログ主 | 11/04/2012 at 10:53 AM

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