10/13/2006

第226号 米朝直接交渉をもとめる

>>日々通信 いまを生きる第226号 2006年10月13日<<

   発行者  伊豆利彦 
   ホームページ http://homepage2.nifty.com/tizu/  

米朝直接交渉をもとめる

韓国の友人から次のようなメールがあった。

>「北朝鮮の核実験は北朝鮮の観点から見れば、もっとも論理的な選択である」という見解が「世界体制論」の著者、
Yale University教授イマニュアル氏によって、発表されましたが、日本では北朝鮮を攻撃しているのみでしょうか。

>アメリカの世論も、なぜブッシュ政権は北朝鮮との対話を諦め、ブッシュ政権中、北朝鮮に核武器を持たせたのかという反論が高まっていると思います。金大中氏も北米両者の対話を求めています。

>北朝鮮にも問題はありますが、強大国大統領ブッシュの責任も問わなければならないでしょう。
なぜ北朝鮮を説得せず、このような危機状態を招いたのでしょう。
まったく能力のない政府、ネオコン勢力が影響力を行使する政府。
アメリカ国民の憤怒は高まりつつあります。

日本にもアメリカの責任を問う声はないわけではない。しかし、マスメディアは核の脅威の一点張りで、金正日を悪の権化とし、経済制裁の強化を求め、軍事制裁さえ肯定する勢いだ。テレビに出てくる一般市民の声も世論調査の結果も同様だ。日本も核武装すべきだという意見さえ出ている。なぜ、朝鮮は核実験にふみきったのかを考えるべきだなどといえば、金正日の味方をするのかと一斉攻撃を受ける。

このなかで船橋洋一は『直接交渉拒否』に異論」と題するコラムを発表した。(朝日 2006/10/11)

アメリカでは北朝鮮の「核実験成功」の発表から一夜明けた9日、主要テレビネットワークが示し合わせたように、テキサス州の自分の牧場で小泉前首相と並んだブッシュ大統領が、マイクを前に「我々は北朝鮮に核兵器の保有は許さない」と語る3年前の記者会見の映像を流したと伝え、「大統領は北朝鮮と金正日(総書記)に対して強い嫌悪感を持っており、ギブ・アンド・テークをする用意はなかった。北朝鮮の(かたくなな)態度と合わせて考えれば、外交が成果を上げるチャンスはなかった」と述べている。

「北朝鮮が核兵器を持ってもテロリストの手に渡らない限り、米国本土に直接の脅威とはならない」ため、イランに比して関心がとぼしい。「米本土を射程に収めるミサイルをまだ完成させていないし、核攻撃を仕掛けてくる意図もないと見ているからだ。」

>とりあえず制裁と拡散防止対策を強化するとともに、「核の傘」の信頼性を強調するしかない。 手詰まりを目の当たりにして、元米政府関係者や専門家の間では、北朝鮮が求める二国間会談に応じ、緊張緩和と核放棄の道を探るべきだという意見が出ている。

>クリントン政権で北朝鮮核問題担当大使を務めたガルーチ氏が「詰まるところ(ブッシュ)政権が北朝鮮と一対一の交渉に応じるつもりがあるかどうかだ」と指摘するほか、前ブッシュ政権で国務長官だったベーカー氏も「敵と交渉することは譲歩ではない」と語る。しかし、ヒル氏は「これは二国間問題ではなく世界全体の問題だ」として取り合わない。「カギを握るのは中国だ」と繰り返し、事態打開の成否はむしろ、同国が制裁に同調するかどうかにかかっていると強調する。

>米側関係者の間では、「北朝鮮は自殺的な行動には出ない」(ストラウブ氏)とし、軍事衝突に発展する可能性はほとんどないと見られている。その一方で、米朝いずれも主張を変える構えは見せていないことから、今後の展開には「希望は持てない妄いう声も聞かれる。当面、日本を含めた世界は「核保有国」となった北朝鮮との共存を余儀なくされそうだ。
(ワシントン=加藤洋一)

制裁強化で朝鮮の人民の飢餓や困窮が深まり、金正日政権を内部から崩壊させるだろうという見解は、金正日政権が崩壊したあと、朝鮮がどうなるかについて考えていないのではないか。中国や韓国、直接国境を接する国は、金正日政権が崩壊すれば、難民が大量に流入し、混乱がおこることをおそれていると伝えれている。しかし、金正日政権の崩壊は軍事政権が成立し、絶望的に隣国に対する攻撃をはじめないという保障はない。

いまの状態がつづけば、日本にも核武装をもとめるが強まることになり、韓国や台湾も同様だろう。韓国で対朝強硬論が強まり、中国でも同様に反胡錦濤の軍部勢力が強まることになるだろう。こうして東アジアは核の「無法地帯」になるおそれがある。

アメリカが東アジアの安定を維持するための確固たる方針を持たず、朝鮮との直接交渉を拒否し、ただ、制裁強化をいうばかりなら、事態は深刻になるばかりだ。朝鮮が6カ国協議や平壌宣言を放棄していないと言っていることは軽視すべきではない。

聯合ニュースは<アナン国連事務総長米朝の直接対話を促す>と伝えている。
(YONHAP NEWS) - 10月12日9時48分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061012-00000008-yonh-kr

中国も韓国もロシアも、米朝直接交渉による事態の解決促進を求めている。アメリカ国内でもその声は次第に強まっているようだ。直接脅威を感じている日本で、制裁の声ばかりが高く、米朝直接交渉をもとめる声が弱いのはなぜだろうか。ブッシュ政府の言い分ばかりを聞いて、その目で事態を見ることしかできないためだろう。

いま、日本で米朝直接交渉による事態解決の声を強めることは、世界のブッシュ批判勢力を強めることになると思う。また、アメリカ国内のブッシュ批判勢力を強め、この秋の中間選挙に影響を与えることになる。

橋本裕さんの掲示板に<北朝鮮とアメリカの国際戦略>と題する興味ある意見が掲載された。興味ある分析なので紹介する。
http://home.owari.ne.jp/~fukuzawa/index.html
9320 Reply 北朝鮮とアメリカの国際戦略

橋本さんは 北朝鮮を理解するには、戦前の日本を思い浮かべてみればよいと思うと言う。日本があの無謀な戦争に突入した直接の原因はアメリカをはじめとする列強の経済封鎖だった。天皇は日本の傀儡だったが、金正日も軍部の傀儡だと橋本さんは言う。

金正日政権は中国・韓国の経済発展に学ぶ改革開放路線を目指したが、ブッシュ政権が成立し、「悪の枢軸」よばわりされ、経済援助を中止されて破綻し、軍部強硬派の勢力が強まった。

金正日の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)労働党中央委第1副部長が9月末に平壌市内で交通事故にあい重傷を負ったが、張成沢は金正日や北朝鮮に改革解放政策を導入しようとしている金正日や、北朝鮮政治経済の中共政治経済への一体化を進める胡錦濤に近い人物だといわれていた。

>したがってこの事件は、「金正日や胡錦濤の反対勢力(北朝鮮軍部やそのバックにいる中共の人民解放軍や長老)が仕掛けた陰謀」か脅しだという説が有力です。

>どうようの事故が、金正日の身辺で続発しています。金正日自身が列車爆破事件であやうく暗殺されようとしています。これらは解放政策に反対する軍部保守派のしわざでしょう。「金正日の最大の敵は、ブッシュや国際世論ではなく、北朝鮮軍だ」といわれるゆえんです。今回の核実験も、軍部の「暴走」とみたほうがよいと思いま
す。

>なお、アメリカはこうした北朝鮮の現状を正確に把握しているはずです。そしてその立場は、金正日を追いつめることです。つまり、北朝鮮の解放政策の邪魔をすることです。アメリカはこの意味で、実は、北朝鮮の保守的な軍部を応援しているわけです。

橋本さんは
 ①アメリカ-中共解放軍-北朝鮮軍部(軍部独裁)
 ②胡錦濤-金正日(改革解放)
の対立を見て、韓国の政権は②を支持し、小泉首相も②の路線で走り出し、2度に渡る首脳会談までしたが、アメリカのブッシュに叱られてやむなく路線転換したと言う。

>アメリカや中共の保守勢力が改革解放路線を歓迎しないのは、北朝鮮を軍事独裁国家として存続させたいからです。これによって、アメリカはアジアにおける軍事プレゼンスを保つことができます。

>北朝鮮が軍事独裁国家としてアジアの一角に蟄居していてくれれば、在日米軍基地も存続できますし、武器輸出もできます。日本という世界第二位の経済大国を自由に支配できるのです。つまり、アメリカの世界覇権主義にとって北朝鮮はなかなかうまみのある「切り札」です。こうしたアメリカの世界戦略の罠におちているのが日本の政治家や国民なのだと思います。

橋本さんから次のメールをいただいた。

>10月10日(火)に北朝鮮が核実験を発表してから、世の中が大騒ぎをしています。日本政府も北朝鮮にたいする制裁措置を早々と講じました。安保理でも制裁決議が裁決されようとしています。新聞を読むと、「狂気の金正日」などという文字が踊っています。

>しかし、こうしたときこそ、腰を落ち着けて、もうすこし広い視野から事件の本質を冷静に捉えてみる必要があります。核実験をした北朝鮮は非難されて当然ですが、なぜ、この時期にこうしたことが強行されたのか、その行動の原因を考えるべきでしょう。

>私はその背景に、北朝鮮の軍事独裁体制を温存させようというアメリカ産軍複合体の強固な世界戦略があると考えています。したがって、北朝鮮の行動に反発し、これを暴挙として非難し、ただ制裁を講じることで、北朝鮮問題は解決しないと思っています。

いよいよ本格的な秋が来た。これから晴れた日がつづくのだろう。
地上はさわがしいことだが、大きな自然から見れば小さな出来事、こうして人間は興亡盛衰の歴史を繰り返して来たのだろう。

自然=歴史というものは残酷なものだ。多くの民族が滅び、数知れぬ人々の屍の上に、無慈悲な歩みをつづける。

小林多喜二は若いときに<十三の南京玉>というエッセイに「昨日まで歴史が進展して来た事を認めながら、もう今日で歴史が永久に停まってしまったように信じる連中がある。」と書いた。

漱石は「思い出すことなど」に次のように書いた。

>種類保存のためには個々の滅亡を意とせぬのが進化論の原則である。学者の例証するところによると、一疋の大口魚(たら)が毎年生む子の数は百万疋とか聞く。牡蠣になるとそれが二百万の倍数に上るという。そのうちで生長するのはわずか数匹に過ぎないのだから、自然は経済的に非常な濫費者であり、徳義上には恐るべく残酷な父母である。人間の生死も人間を本位とする吾らから云えば大事件に相違ないが、しばらく立場を易(か)えて、自己が自然になり済ました気分で観察したら、ただ至当の成行で、そこに喜びそこに悲しむ理窟は毫も存在していないだろう。

しかし、私はいまここに、無力ながらも生きている。生きている以上、この現実に向って発言し、働きかけることをまぬがれない。
無にして有、一体二様の見解を抱いていまを生きると述べた「点頭録」の言葉を胸に抱いていまを生きるつもりだ。

世界は複雑怪奇で明日何がおこるかわからない。しかし、いまを生きる人間として、せめて我らの運命を、遠い安全地帯に住んでアジアの混乱と戦争で儲けようとする連中の手にゆだねるのでなく、アジア人の問題はアジア人で解決するということにつとめたいものだ。アメリカのネオコン一派が日本のために自国の利益を犠牲にしてくれるなどと思ったら大間違いだ。

おわりの言葉を書こうとして、いつまでも終らない。老耄の証拠だろう。しかし、命ある限り、老いの繰り言を繰り返すしかない。

皆さんはこれからの人たちだ。
元気でいまを生きてください。

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07/31/2005

第158号 2005年8月1日6ヶ国協議と日本

  >>日々通信 いまを生きる 第158号 2005年8月1日<<

6ヶ国協議と日本

6ヶ国協議はいま合意文書の作成に向けて努力中だという。前回に比して大きな前進だ。朝鮮(共和国)もアメリカも協議の成功に大きな期待を寄せ、そのために真剣な取り組みをしているように見える。

日本の報道は難行とか、米朝間の対立は埋まらないとかいう記事が多い。この会議の直前に朝鮮の元秘密工作員の国会証言をおこなったり、横田めぐみさんの母親の悲痛な絶叫を放映したりして、もしかしたらこの協議の成功を望んでいないのではないかとさえ疑われる。

日本の政府筋は、アジアの未来に決定的な意味をもつこの会議の最中に、この会議に対してきわめて消極的な態度を取っているように思われる。この会議についての積極的なコメントは何一つ聞かれず、国会では与党内でも、国民の間でも意見が二つに割れて決着をつけがたい郵政の問題に血道をあげている始末だ。

いま、この会議の成功に日本政府が冷淡なのは残念なことだ。おそらく、アメリカの意向を汲みかねてどうしたらいいのかわからないのだろう。

平和で順調にことが運んでいるときは無能な政府でもすむのだが、歴史の転回点ともいうべき重大なときには、二世、三世の無能な政治家には、情勢の変化がわからず、沈黙するか、硬直した強硬路線のご託をならべるしか能がないのだ。

いま、この協議を成功させなければならない。それは米朝がともにいだく強い決意だ。アメリカは時間が経てば朝鮮の核兵器開発が大きく前進することをおそれている。朝鮮はなんとしてもアメリカと国交回復して、平和を確実にし、一刻も早く経済を建て直さなければならない。

朝鮮が核兵器の開発を急ぐのは、これで日本やアメリカを攻撃するためではない。そんなことことをしても、たちまち強力なアメリカの軍事力に国土を破壊され、政権が覆滅するのは明らかだ。

朝鮮の核兵器開発はアメリカと国交回復を実現するためのカードなのだ。いまは、軍事力で国の安全を維持することはできない。軍事優先主義をとなえる朝鮮もそれは知っているはずだ。

アメリカもイラク戦争によってそれを切実に思い知ったにちがいない。朝鮮を攻撃して何が得られるか。そもそも、その戦争に韓国の協力を得られるか。たとえ、金正日の政府を崩壊させ、金正日を殺害したところで、混乱が拡大し、民族的抵抗を招くだけで何一つ問題を解決することはできない。

イラク軍を壊滅させ、フセインを捕えてもイラク問題は解決しなかった。ますます混乱が拡大し、泥沼の戦争にひきこまれていくばかりだ。もしアメリカが朝鮮に攻め込んでも、必ずしも、朝鮮が韓国の米軍基地を攻撃し、韓国軍が朝鮮軍と殺し合いをするという展開にはならないかもしれない。米軍はゲリラと化した朝鮮軍に長期にわたる出血を強いられることになるかも知れない。韓国はその戦場になり、たいへんな迷惑を蒙ることになる。韓国人民はアメリカの戦争に反対し、アメリカとの対立を深めることになるだろう。

アメリカは朝鮮を攻撃して何を得るのか。イラク戦争で身動きできないアメリカはこれ以上無意味な戦争をして、若者を殺し、国力を消耗する余裕はないのだ。

そうだとすれば、平和によっていまの問題を解決しなければならない。朝鮮は南北間の融和と協力を軸に、中ロの支援もえて、あたらしい東北アジアの一員となり、東北アジア共同体の成立に向けて進んでいくだろう。アメリカはそこにどうしても一枚かむ必要がある。米朝国交回復はアメリカにとっても利益になるのだ。

もちろん、朝鮮は米日の援助がほしい。米日との国交回復を強く望んでいる。しかし、米日がアジアを敵とするならば、米日抜きで東北アジア共同体の発展の方向に進むことになるだろう。しかし、それはアメリカも日本も望むところではない。アメリカはアジアとの協力なしには経済が成り立たない。日本ももちろんそうだ。世界経済はひとつに結ばれ、平和を必要とするのだ。

戦争という手段の無意味さがあきらかになったいま、平和的協力の道を探らなくてはならない。それがいま、アメリカから見ても、なんとしても6ヶ国協議を成功させなければならない理由である。

あれほど敵対的だった米中が、いまは切っても切れない深い経済のきずなでつながれている。これからはアメリカにとっても、かつてあれほどの戦争をしたヴェトナムとの友好と経済協力が大事になるだろう。

東北アジア共同体が成立し、さらに東南アジア諸国連合との結びつきがつよまり、東アジア共同体の方向に進むとすれば、アメリカはそれをこころよう思わないにしても、そのなかに重要な位置を占める必要があるのだ。それが、これからのアジアの動向であり、アメリカの位置である。日本はこのような世界史の動向に対してどのように進むつもりなのか。過去の戦争を肯定し、アジアを敵視する態度をとりつづけ、アジアの不安定要因となる道を選ぶのか。

米朝の亀裂、相互不信は深い。なにしろ朝鮮戦争以来、半世紀にわたって国交断絶し、敵対してきたのだ。米朝合意が困難で、6ヶ国協議が難行するのは当然だ。しかし、どのような紆余曲折を経ても、合意が成り立ち、米朝国交正常化が実現するのであろう。日本はぐずぐずしながら、そのあとで国交回復をするつもりなのかもしれない。しかし、これではアジアにおいて「名誉ある地位」を占めることはできない。

日本はなぜ、東アジア共同体の成立に尽力し、そこで「名誉ある地位」を得ようとしないのだろう。アメリカのひたすら軍事力にたよる一国覇権主義が敗北し、大きな後退を余儀なくされているいまは、日本国憲法が光り輝くときだと思われる。

いま、堀田善衛について書いていて、武田泰淳の『蝮のすえ』の辛島の言葉を思い出した。

辛島は上海で特務機関の仕事をしていて、日本人を戦争に動員する仕事をし、戦後のいまは戦犯として中国政府に追及されている。辛島は言う。

「俺は日本精神の演説をした。君が言うとおり、聴き飽きるほどした。人々はそれを信じて死んだ。俺の若い兄弟も死んだ。奴らは二度と生き返らん。都都的(トントンデ)生き返らん のだ……」                       
            
「呼べど答えず……生き返りはせんさ。夢枕にもたたん。忘れられる。はじめは段々と、しまいにはキレイサッパリ、忘れられるんだ。そういう世の中を、君はどう思う。俺は日本精神なんかなくても生きていられる。今日も生きてる。なくても生きられるくせに、日本精神なき者は売国奴だと演説した俺と、そんな俺の演説をまに受けて喜んで信じてさ、死んでしまった奴らとそれから又、Aのような奴、君のような奴、あの女のような奴、そんな奴等でできあがっているこの日本という奴はこれは一体何なのだ。え、何だ、これは。俺は死刑になる。それは天罰だ。天罰でなくてもいい、しかし罰だ。」

「だが俺を罰したところで、すまんよ、すみはせんよ。俺は又生まれかわってくる。多分は同じ日本人として生まれかわってくるんだからな。…………もしかしたら、この人種は、つまり俺たちは、絶滅された方がいいかも知れんよ。どっちにしろ、このまま只ですまんよ。すむはずがない、これは苦笑で終わる問題じゃない。皮肉で終わる問題じゃないんだ。な、君もふくまれているんだ。インテリーもふくまれているんだからな」

「インテリーは社会の良心だ。そうだな、杉君。イヤがってもそれは責任だ。だが、君らは社 会の腕にも脚にも、胃にも腸にもなれやせん。せいぜいのところ神経だ。小うるさい、役にも立たぬ神経だ。しかも妙てけれんな一人種の末梢神経だ。騒いでもだめさ。世界も俺たちも痛痒を感じんよ。俺たちは、まあ心臓さ。とまりたい時はとまる。」

「蝮のすえ」は戦後間もなく1947年の作品だが、この辛島の言葉を、戦後10年たって、「記念碑」を書く堀田は切実に思い出していたのではないか。朝鮮戦争で経済復興が急速に進み、日本の再軍備が押し進められていた時代であった。

そして、A級戦犯が合祀された靖国神社に内閣総理大臣が参拝し、憲法改訂が急がれるいま、辛島の言葉はますます強い重みで私たちに迫ってくる。

歴史がこれらの作品をよみがえらせる。そして、これらの過去の作品は現代をはっきりと照らし出しているのだ。

暑さの中に8月が来る。戦後60年ということで、テレビで例年にましてあの戦争を回顧する番組が放映されている。

戦争とは何か。いま、日本はどこへ行こうとしているのか。暑さのなかで思いを深める時だと思う。

パソコンが壊れ、落ち着かぬ気分で日を過ごしている。
皆さんはいかがお過ごしですか。
暑さに喘ぎながらも、歴史の転換点にあるいまを、元気に生きたいとおもいます。
体に気をつけてお過ごしください。

    伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu/

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